本日(9月1日)、ナゴヤドームでの中日戦、九里亜蓮投手が8回途中まで投げ、5失点を喫し、142球投じました。「先発は100球まで」が目安とされる今の野球。今回の采配の是非を含めて、「佐々岡体制」の継投について意見を表明したいと思います。
目次
2019年シーズン──佐々岡投手コーチ時代
現監督・佐々岡監督は、2019年シーズンから1軍投手コーチに就任し、おそらく継投について関わっていたと思われます。その前年までは畝コーチ(確か今3軍コーチ)が継投を取り仕切っていたはずです。プロ野球、特にカープファンは、畝継投と佐々岡継投を比べたときに一つの大きな違いが目についたはずです。
それは先発投手の球数です。みなさんの印象でも、2019年シーズンは「先発を引っ張るなー」と思ったかもしれません。本当はパッとデータを出せればいいんですが、ここ3,4年通してローテーションを守った先発投手は大瀬良や野村ぐらいしかいないので、比較が難しいのです。(比較の参考として、https://www.gurazeni.com/player_pitching/909/year:2019、ほか参考一覧をページ末尾にまとめています)ページ末尾へ移動
先発投手の球数が増えたことを示す一つのデータとして、大瀬良投手の2019年シーズン成績と2018年のものを比較してみます。すると、防御率は2018年シーズンの方がいいのに(2.62→3.53)、完投数は2019年の方が多いです(2→6、これはリーグトップ)。これは、2019年の大瀬良投手の調子にムラがあった(いいときはいいまま完投、悪いときは打たれ全体の防御率が悪化)ということかもしれませんが、先発投手に多く球数を投げさせた、引っ張ったということのあらわれともいえると思います。
このように、佐々岡コーチが継投を仕切るようになってから、先発投手の球数が増えているのではないかと思われます。
2020年シーズン──佐々岡監督時代
今シーズン、佐々岡新監督が就任しました。継投はおそらく佐々岡監督主導・考えのもと行われているでしょう。先発投手をできるだけ引っ張る方針は続いていると思われます。例として森下投手を挙げると、ここまでの9登板はすべて100球を超えています。さらに120球を超えて投げたのが5試合、最多は136球(6月28日中日戦)です。大瀬良投手をみると、最多が132球(6月26日の中日戦)ですが、今季は調子に波があるようで、6回を投げきれず早めに降板した試合が4試合あるようです。
この2投手をみると、投げすぎのツケが回っているのではないかと思わざるを得ません。大瀬良投手の不調は上記の通りで、最初の不調は7月4日の阪神戦、そう、132球投げた中日戦の次の登板なのです。中7日空いてはいますが、前日の7月3日は雨天による試合前中止、つまりスライド登板です。中6日で通常通り登板するべく調整していたことでしょう。森下投手をみれば、一度コンディション不良によって登録抹消されています。1軍復帰は7月23日と重度の問題ではなかったようですが、投げすぎが原因ではないかと勘ぐってしまいます。
先発投手の球数についての私見──メジャーと比較
先発投手は100球をメドに交代されているというのが、現在の大方(おおかた)の考えでしょう。では、そもそも100球というのはどこからきたのでしょうか?私の認識では、メジャーリーグからきたものです。アメリカ野球では「肘・肩は消耗品」という考え方があるといいます。先発投手の投げすぎを避ける目的として、100球という目安が確立されてきたのでしょうか。それを日本のプロ野球でも取り入れ、リリーフとの分業制がこれも徐々に確立されてきたのでしょう。
分業制確立以前は、「権藤権藤雨権藤」「400勝投手金田正一」の時代まではいかなくとも、(投球回のシーズン記録は400回以上しかNPBのHPに載せてもらえない……参考資料参照)いいピッチャーにできるだけ多く投げさせて勝っていくのが主流だったのだろうと思います。しかし、選手のケガを防ぐ必要もある。あの権藤博の全盛期はせいぜい1,2年目までであり、短命に終わっています。
では、「先発は100球まで」のふるさと、メジャーリーグの先発投手事情はどうなのかというと、中4日、100球厳守というものだと思います。プロ野球の中6日で100球前後というものと比べると、日本流にアレンジされて定着していて、バランスもよいのではないかと思います。中6日あれば100球を少し超えたとしても、メジャーと比べて著しく負担が大きいとはいえません。実際、メジャーに挑戦した黒田投手は、メジャーの方がキツいと感じていたようです。(心技体で表せば、体に比重を置かなければならなかったらしい)
私の意見をまとめれば、日本の「中6日100球強」という投手運用はバランスがよく、おおむね適切なのだろうと思います。バランスというのは、戦力と選手の保護のバランスのことです。選手のケガを防ぎつつ戦力も維持できるバランスだと思います。
リリーフ投手の負担とのバランス
投手のケガ防止という観点では、リリーフの問題も出てきます。約140試合×9イニングを投手全員で分担していかなければなりません。先発をどこまで投げさせるかは、リリーフにどこまで負担をかけるかという問題と表裏(ひょうり)をなしているのです。
近年のカープの投手運用についての私見
畝コーチ時代は、ややリリーフの負担が大きかったのではないかと考えています。2016年の日本シリーズで今村投手が何連投してシリーズ記録になったというのがその象徴でしょう。今村投手はその後第一線で戦えなくなりました。その他いいリリーバーが現れては消えていきました。
しかし、それについて私は非難したくはありません。一般的にリリーフ投手は先発投手より短命だし、その運用で3連覇を成し遂げることができました。私は、ここ2年のカープのリリーフ崩壊は3連覇の後遺症あるいは代償であり、やむを得ないものではないかと考えています。問題は日本一になれなかったことですが。
その反動なのでしょうか、佐々岡体制では先発投手の負担が大きくなりました。私は一様にこれを非難はできません。畝体制の反省としてリリーフの負担を減らそうという方針にも見えるからです。
さて、佐々岡方針が投手の選手生命に対してどのような影響を与えるかはまだわかりません。投手の肘や肩へのダメージは勤続疲労として蓄積されていき、ある日、ケガや不調となって現れます。大瀬良、森下両投手をはじめとして、先発投手たちの選手人生が幸多きものになるように祈りましょう。
また、コーチの違いが運用の違いになるとは限りません。先発とリリーフの選手の実力差によっても変わるものでしょう。実際、今年はリリーフが不調なこともあり、先発投手に負荷がかかっている面もあると思います。
以上をまとめれば、近年のカープの投手運用は著しくおかしいものだとは思いません。先発投手とリリーフ投手の負担のバランス・実力のバランスを考えれば、そこまで不可解なものだとは思えません。また、上記の方針転換が投手のケガに対してどのような結果が現れるかは今後検証され、その後の投手運用の指針となるはずです。見守っていきたいです。
九里の142球についての私見
ここまで、先発投手の運用一般について、また、カープの投手運用について意見を述べてきました。ケガを防いだ上で、好投手にできるだけ長く投げさせる。この基本は一貫しているということもできるでしょう。
その上で、「九里の142球」の是非を問います。結論からいえば、必要なかったとしかいいようがありません。納得、合点がいかない。
ケガを防いだ上で好投手に長く投げさせることが基本だとしたら、今日の継投はそれに当てはまるものだったといえるでしょうか。試合展開を見れば、中日の大野投手は非常にいいピッチングをしており、1点2点勝負だった。ならば、疲れの出始めた九里投手を続投させる意味は薄かったのではないでしょうか。中盤まで安定して140キロ中盤は出ていたストレートは、最後の2打席は140キロちょっとしか出ていませんでした。この数キロは大きな差なはずです。最後はコントロールもバラついて、ビシエド選手に四球を与えていました。結局ケムナ投手にスイッチしたら、5球で1アウトをとってそのイニングは終わりました。
一方、選手の負担という観点でみてみます。142球はケガ防止の点では明らかに投げすぎです。九里投手は次の登板まで中7日以上空けるべきです。では、リリーフへの負担はどうでしょうか。九里投手はできるだけ長いイニングを投げ、先発投手としての責任を果たしたいと言っていたそうです。実際、この試合から13連戦が待ち受けており、連投を避けるために、その初戦である今日はリリーフをあまり使いたくなかった事情は理解できます。
しかし、今年は優勝しなければ次には繋がりません。現状といえば、5位に沈んでいます。しかも、例年以上の過密日程であり、普通にやっても負担は大きい。ならば、今年はある程度捨て試合を作って選手の負担を軽くすべきなのではないでしょうか。もっと言えば、来年以降優勝を狙えるチームにするべきではないのでしょうか。つまり、何が言いたいかというと、今日の試合は惜しまずに勝ち継投をだして、結果連戦中にリリーフを酷使しなければならなくなれば、連戦の途中で2軍と投手を入れ替えればよい。そうすれば今日の勝ちを狙いつつ、選手の負荷を下げられたはずです。
今後の佐々岡監督に期待すること
ここ数年、カープは外国人選手の力を借りて戦ってきました(特にリリーフ)。それが今年はスコットちゃんをはじめとして活躍が見込めません。リリーフというウィークポイントが明確な以上、来年また補強して戦えばいいじゃないですか。また、佐々岡監督は向こう2,3年はやるんでしょう。パリーグの某関西球団と違って、カープは監督人事に慎重です。去就は本人の意思を尊重してきたように見えます。なら佐々岡監督も今年焦る必要はないはずです。選手は必死にやるでしょうが、首脳陣が一緒になって熱くなりすぎてどうする。一歩引いた目で、冷静に長期的なチーム作りをするべきです。
ここまで言ったとおり、佐々岡監督には長期的な視点で戦ってほしい。その意味で一番の懸念は、若手リリーフを使い潰さないかです。今年、リリーフに苦しむ中、ケムナ、島内、塹江、去年からの菊池保則と、イキがいい投手がでてきました。フランスアも含めて、大きな財産です。これを今年の最下位争いで使い潰しては欲しくない。中崎や一岡、今村などは、優勝したから不調も認めることができるんです。頼むから、大事に使ってくれ。
私は佐々岡監督を嫌って「文句」を言って全否定しているわけではありません。堂林の抜擢に、不調のタナキクの上位外し。これらを見れば、柔軟な采配ができる監督ではありませんか。鈴木誠也という絶対的な主砲がいます。上位を安定して任せられる堂林、西川がいます。さらに會澤・坂倉の打てる捕手で他チームに差をつけられる。あとは平均レベルで打てて守れる二遊間がいれば優勝が狙えるはずです。レフトとファーストは若手と松山でなんとかなる。期待の若手野手がポロポロ出てきた。今年とは言わないから、佐々岡監督、優勝できる、優勝しろ。バントもやめてね。関連記事、拙稿:バントをやめてくれ、NPBの発展のために
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参考資料として
グラゼニ.com
大瀬良投手
https://www.gurazeni.com/player_pitching/909/year:2020
森下投手
https://www.gurazeni.com/player/1785
データで楽しむプロ野球
大瀬良投手2019年
https://baseballdata.jp/2019/playerP/1300057S1.html
2020年
https://baseballdata.jp/playerP/1300057S1.html
ほか
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